ワインの真話 第24話 <ワイングラス(其の四)> 11-270 
第24話 <ワイングラス 其の四> 科学と感性

ブルゴーニュの赤ワイン用に注文しておいたグラスが届きました。
この形と大きさ、そして1000円以下 と条件をつけると皆無だったので心待にしていました。
早速、ブルゴーニュルージュ(2007年 ルシアンボワイヨ作)を注いでみると…
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酸味が強くタンニンがザラつきます。果実味が痩せて、美味しい甘さが全然ありません。愛用品の一つ、フランス料理店「銀座エスコフィエ」さんのオリジナル高級グラスに注いで比べてみると、少し甘味が加わり舌触りも柔らかくこちらの方が飲みやすいのですが・・・ 問題はこのワインは今(2011年10月7日)閉じていると言うこと。閉じている状態を正しく(過不足なく)出来させているのはどちらかと言うと… もっと飲みこんでみないと判りません。

ちょっと昔、音楽ファンではなくオーディオファンだった頃、自分が思う「良い音」を求めて散財していたことがあります。ところが、この「良い音」という感覚は「人によって」違うのは勿論ですが「時によって」も変わってしまいます。対して 「正しい音」は不変で 何時間聴いても疲れません。飽きません。今から思うと、「良い音探し」は趣向という曖昧な世界で拘っている迷子のようなものです。

音楽と同様、目で見ることが出来ないワインの味にも同じことが言えます。「良い味」を求めると、<強い>、<濃い>ものに目が行き、総じて<甘い>ものを評価しがちになります。
今年の9月3日にNHKで放送された「アインシュタインの眼」#139 ワイングラス~魅惑のカタチの物語~では グラスの形が舌の味雷に影響していることを映像化し、グラスの形がワインの味わいを変える理由を証明したような内容ですが、それだけでこの壮大なテーマを結論付けてよいのかが疑問です。多くの視聴者に狭義な固定観念を植え付けてしまいそうです。

ワインの味わいは味雷がそれを捕らえる以前に グラスの形そのもがワインの香味そのものをかなりの割合で決定づけてしまっています。これは、銀座エスコフィエさんが「樹(イツキ)」なる歪んだグラスを開発し 見事な立証をしています。一本のワインを形状の異なる二つのグラス A B で試飲するとAはAの香味、BはBの香味に感じるのは周知の通りですが、次に、いちどAに注いだワインをBに移し替え Bのグラスで試飲すると香味はどう感じるでしょう?NHKがスーパーカメラで徹底解剖した番組内容ではBの香味になるはずですが、実際にはAの香味のままです。壮大なタイトルの番組ですが、ワインは一番最初に注がれた容器(グラスやデキャンタ)にかなり大きな影響を受けることに触れずして語れるテーマではありません。

目に見えないものの映像化はそれが全てだと思い込んでしまう危険があります。オーディオ機器の周波数特性がデータ上優れていてもそれがイコール「良い音」(ましては「正しい音」)ではありません。車の動力性能がデータ上優れていてもそれがイコール「良い車」(ましては楽しい車)ではありません。一般的に最も歓迎されるデータは数値の「高さ(量)」で、次いで「バランス」のようですが、もっと大切なことはデータ化しにくい「質」です。そしてこの「質」を見分けることが出来るのが私達の感性だと思います。ワインの香味が変わる原因は、グラスの形だけではなく その材質やワインボトルのネックシールの質(有無)、また気圧や波動の影響も考えられます。これらが将来 映像やデータによって目で確認できるようにようになっても それが私達にとって一番大切な感性を失うブラックホールにならないことを祈ります。

by.ponkichiパパ
by a-ponkichi | 2011-10-10 09:29 | ワイン(下記タグ参照) | Comments(0)
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